なぜ紙袋が重要なのか。紙袋から広げるブランドとその強み。
デパートデパートが考える紙袋デザインの強みと紙袋から広げるブランド戦略の提案。

紙袋とCIの関係
CI(コーポレート・アイデンティティ)はロゴタイプやシンボル、色彩や書体などシステム化された組織のアイデンティティを指す。日本では1970年代前半から各企業が導入をはじめ、1980年代から90年代にかけて制作と導入が非常に活発になった(CIブーム)。現在はCIを含めた「ブランディング」として括られることが多い。そのCIのなかで紙袋の立ち位置はアプリケーションデザインと呼ばれる領域にある。 シンボルやロゴタイプの応用デザイン・付属デザインとして制作されることが多かった。

なぜ紙袋がブランドにおいて重要なのか?
紙袋のデザインが持つ強み
ではなぜ紙袋から広げるブランドを提案するのか。
それは紙袋デザインの3つの特徴(伝播性、拡張性、識別性)にある。
・ひろがりやすい(伝播性)
紙袋は媒体として特に大量に印刷される。商品パッケージのように特定の商品のみに使用されることもない。リップ1本からフライパンまであらゆるものが包まれ、あらゆる街へ出ていく。地域も限定されず、用途も限定されない。再利用されることすらある。デザインとして多くの人の目に触れ、広がりやすい媒体だ。
・つくりやすい(拡張性)
紙袋は印刷物のため、デザインは比較的自由に作ることができる。また印刷物でありながら、立体であるため表現の幅が広い。色、材質、大きさなど拡張性は無限大。
・わかりやすい(識別性)
ひとは紙袋のデザインでブランドを識別することがしばしばある。特に有名なデザインになると紙袋単体でブランド力を持つこともある。紙袋の表現によって店名や商品、ブランドを想像させることができる。

紙袋からブランドを作る:百貨店の紙袋
紙袋から広げるブランド。その最たる例が百貨店の紙袋だ。百貨店の紙袋は特定のモチーフやパターンでブランドを築いた例が特に多い。
例えば、このタータンチェックの紙袋。

この紙袋を持つ人を見ると、多くの人が伊勢丹を思い浮かべる。
紙袋をよく見ると外側に伊勢丹のロゴタイプはない。タータンチェックを主力商品としているわけでもなく、チェック柄にルーツがあるわけでもない。 しかし、このタータンチェックを見ると伊勢丹とわかる。
これはタータンチェックの紙袋=伊勢丹が人々のブランド認識として定着していることに起因する。 紙袋の識別性を活かした好例であり、こうして築かれたブランドは非常に強固なものとなる。伊勢丹に限らず高島屋や阪急など紙袋デザイン自体がブランドとなっている百貨店は多い。
これらのことから紙袋デザインはブランディングにおいて重要な位置にあることがわかる。 デパートデパートでは紙袋をブランドの中心に置き、広げていくことを提案している。

引用
(1) ココマス委員会(1991). 『企業とデザインシステム C3』. 産業能率大学出版部.


