願いを名前に。コンセプトを名前にしたデパート。
デパートの名前からルーツや由来を掘り下げるシリーズ。前回の記事ではデパートの名前を4つのパターンに分けて、名前からわかるデパートのルーツを紹介した。今回は「コンセプトを名前にしたデパート」を取り上げる。

グランデュオ
駅ビルとデパートの二重奏
グランデュオはJR東日本が東京都の立川と蒲田に展開するデパート。
電鉄系百貨店では唯一名前に鉄道会社名が入っていない珍しいデパートだ。グランデュオはアルファベットで表記するとGRANDUO。
GRANは英語のGRANDが由来、素敵な(口語)という意味。
DUOはドイツ語で二重奏の意味が由来になっている。
このデパートはJR東日本が駅ビルの新業態開発の一環として阪急百貨店と提携して立川駅に開店した。これにより従来の駅ビルでは付き合いのないブランドや商材を消化仕入れで取り入れることに成功している。一方で量販店やレストランをテナントとすることで両方の利点を活かすこと目指した編集が特徴だ。駅ビルのテナントとデパートの売り場を組み合わせた「素敵な二重奏」をコンセプトとし、グランデュオと名付けられている。

ヤマトヤシキ
デパート→お屋敷
ヤマトヤシキは兵庫県加古川市で営業するデパート。
片仮名の不思議な名前は明らかにほかのデパートとは一線を画している。
その由来はヤマトが大和、もともと地元10社ほどが合併して生まれたデパートであったため人が集まって大きな和と作るという意味。
ヤシキは屋敷を意味する。これは外来語のデパートを日本語にする際に、デパートは大きな建物、日本で大きな建物といえばお屋敷という発想から生まれたといわれている。
もともとはひらがなで「やまとやしき」であったが、1972年の改装を機に片仮名の「ヤマトヤシキ」に改められた。まさにコンセプトをそのまま名前に落とし込んだ面白い名前だ。

丸広百貨店
木は枯れるから名前を変える
丸広百貨店は埼玉県内で5店舗を展開する、まさに地元密着の地方百貨店。
名前だけ見ると広を丸で囲んだ商号が由来に思えるが、その成り立ちは特殊。もともと創業時は「丸木」という店名だった。
1949年に飯能にてデパートを開店したが、1956年に「丸広百貨店」と社名を変更。デパートを多店舗化、業容を拡大していくなかで、創業者の大久保竹治が「木はいつか枯れる」という考えにいたり「何事も丸く広くやっていきたい」という思いから丸広百貨店にしたとされている。

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消化仕入れ
百貨店の大部分を占める仕入れ方式。売り場に並ぶ商品はアパレルなどのメーカーのもの→レジを通した際に百貨店のものとなり→直後お客様に渡される。この方式により百貨店は在庫リスクを抱えず、メーカー側は柔軟に商品の移動ができる。一方で接客や編集をメーカーに任せた商習慣は百貨店の競争力を低下させているという指摘もある。
定借化
百貨店が直営で運営していた売り場をテナントに貸し出すこと。定期借地化の略、テナント化ともいう。売り場の管理、設営、販売員、商品供給などはすべてテナントが行い、百貨店は賃料を得る。直営売り場がなく、すべて定借化した商業施設は百貨店ではなく、ショッピングセンターまたはファッションビルとなる。
地方百貨店
特定の地域に限定して展開する百貨店。地場百貨店とも。地域を跨いで展開する大手百貨店や準大手百貨店とは異なり、その地方に密着した営業が特徴。ただし、本稿では電鉄系百貨店は含まない。